「ただいま。いい子にしてた?」
「…」
それから一時間も経たない内にたっくんは帰ってきたけれど、私は置いて行かれたことを未だに根に持っていた。
仕返しのつもりで返事をせずにいると、たっくんは不思議そうに私の顔を覗き込んで。
「拗ねてるの?そういうとこ、ほんと可愛いよね」
楽しそうにそんなことを言っては、クスクス笑って頭を撫でてくる。
なんだか、かなり子供扱いされてるような気がするんだけど…
「私、今日で17歳なんだよ?分かってる?」
「うん、もちろん分かってる」
「分かってるならいいけど…」
でも不思議。
寂しくて拗ねてたのに、たっくんの顔見たらそんなのどうでもよくなっちゃうんだもん。
「じゃあパーティー始めよっか」
「うんっ」
お家で二人きりで過ごす誕生日。
見慣れたいつもの家で、お母さん達が一生懸命作ってくれた美味しいご飯を食べる。
どんなにオシャレで高級なレストランよりも、居心地がいいこの空間で祝ってもらうのが私のなによりの幸せ。
「朱里、誕生日おめでとう」
「ありがとう、たっくん」
そして…目の前には愛する人がいて、微笑んでくれる。それだけで、この上なく贅沢で幸せな誕生日だと私は思うんだ。


