「話をするだけだと思ってたのに…なんで急にうちに泊まることにしたの?」
「最近マサトのことで必死になりすぎてあんまり寝れてなかったんだけど、今日少しだけ落ち着いたんだ。だから朱里に癒されながら寝たいなって」
「落ち着いたって…心、開いてくれたの?」
「まだ開きかけってとこだけど…でも前に進めそうだよ」
「そっか。よかった」
私は知ってるよ。
マサトくんが少しずつ前に進めそうなのは、たっくんが本気で向き合ったからだってこと。
そんなたっくんだから、マサトくんも心を開きかけてくれてるんだね。
隣にいるたっくんが嬉しそうなことが嬉しくて、寄り添うように引っ付けば受け入れるように頭を撫でてくれて。
「朱里…俺、教師になりたい」
大きな手で撫でられるのが気持ち良くて、心地良くて、一瞬目を閉じかけていたけれど…聞こえてきたその言葉に、再び目を開いた。
「教師……?」
「うん。生徒の心に寄り添える、そんな先生になりたいって思うんだ」
教師という職業は、正にたっくんにピッタリだと思った。
たっくんは勉強教えるのがすごく上手だけど、
理由はそれだけじゃない。
たっくんは、いつだって誰かのために一生懸命なれる人。だからきっと、生徒のことを思い、一人一人の心に寄り添える教師になれるはずだから。
間違いなくたっくんの天職だろう。


