「朱里…力抜いて」



もう何度落とされたのか分からない唇。

深いキスになると体が強張ってしまう私に、たっくんが耳元で囁きながら優しく手を握ってくれる。

その手がとても温かくて…

体中の力がスゥーッと自然に抜けていくのを感じていた。


力を抜いたまま受ける深いキスは、なんだかすごく心地がよくて…

「キスしたら安心する」って、たっくんの言ったこの言葉がピッタリ当てはまるような感覚だった。


それから何度も何度もキスを交わした。
寂しさを埋めるように、たくさん抱きしめてもくれた。

それなのに、肝心なことは何も語らないままたっくんは家に帰ってしまって…



「な、なんでこうなるの…?」

「え?なにが?」




だって、だって…

お腹空いたから家でご飯食べて、そのあとお風呂に入ってから今日のこと話しに来るって言ってたのに。
だから、ずっと待ってたのに。

それなのに…何故か今、私はたっくんと向かい合う形でベッドで横になっている。