朱里は将来俺のお嫁さんになってくれる。

それが嬉しくて嬉しくて、その日はスキップして家まで帰った。



「ただいまー」

「拓海おかえり。随分ご機嫌ねぇ。朱里ちゃんと遊んできたの?」

「うん。あのね、あかりちゃん僕のお嫁さんになってくれるって!」

「あらー。良かったわねぇ。じゃあ将来朱里ちゃんに指輪買ってあげないと」




きっと俺の初恋を微笑ましく思ったんだろう。

母さんは笑いながら俺の頭をずっと撫でていた。




「指輪って僕にも買える?」

「そうねぇ…大人になってお仕事頑張れば買えるわよ」

「大人になるまでは買えないかな?」

「うーん…たとえばお年玉をコツコツ貯めるとか。それなら高校生になる頃にはちょっとした指輪くらいなら買えるかもね」

「そっかぁ…」



それからだった。

誕生日も、クリスマスも、プレゼントと名の付くものは全て現金を貰うようになったのは。

そのお金も、お祝いで貰ったお金やお年玉だって…全て貯金して、いつしか我が家ではこれを“朱里貯金”と呼ぶようになっていた。

自分の服や漫画なんかはお小遣いで買っていたし、無理したり我慢をして貯金していたわけでもない。

だって俺のなによりの幸せは朱里の存在だから。

いつか朱里と結ばれるその日だけを夢見て、コツコツとお金を貯め続けていたんだ。