それを聞いたケイくんは、ふっと笑ってから髪をかき上げた。



「お前はほんと、面白い奴だな」

「……って、かなり真剣に話してるんですけどっ!!」

「知ってる。だから面白い」


「……えー……?」



訳もわからず、きょとんとする私にケイくんは言う。



「俺のために真剣になってくれる。 そういう女は初めてだよ。
お前と話してると、不安とか全部吹っ飛ぶ。
お前と出会えてよかったって、素直にそう思う」



ドキッとするような、爽やかな笑顔。

初めて会った時は『イヤな奴』って思ったけれど、今のケイくんは、とても優しい顔してる。



「1番になって帰ってくるよ。 今度こそ、ちゃんと約束を果たす」



スッと差し出された、右手の小指。

それを私の右手の小指と重ね、絡ませる。



「いつになるかはわからないけれど、必ずトップに立つよ」



真っ直ぐな言葉と共に、指が離れていく。

その後、ケイくんはまた笑ってボールをバウンドさせ、構えた。



「『夢を叶える条件は、強い覚悟と熱い気持ちだけ』。
誰が言い出したのかは知らねーけど、今の俺にピッタリな言葉だと思わない?
1回は諦めた。 だけど俺はまた、バスケと共に生きていく。
もう立ち止まらないし、振り向かない。 もう絶対に、諦めない」



誰よりも綺麗なフォームで放たれたシュートは、ゴールへと吸い込まれる。

振り返ったケイくんの微笑みは、誰よりも何よりも輝いていた。