「な、なんで教えてくれないの!?」

「このままの方が面白いから」

「だから、面白くないってばー……」



頬っぺたを膨らませて反論するけど、ケイくんは笑ってる。



「『ケイ』で話が出来てるんだから、それでいいじゃん」

「そりゃあ、そうだけど……」



でも私、ケイくんの『特別』なんだよね……?

何も知らなくても、特別なの?



「名前は、言いたくなったら言う。 だからその時を待っとけ」

「……もう二度と会わないかもしれないじゃん」

「その時はその時。 『ケイと呼ばれてる男が居た』くらいに思っとけ」



……まぁ、確かにそれでいいっちゃいいけど……でもなんか、妙な気分。



「絶対に教えてくれないの?」

「今はな」

「……ケチ」


「あはは、勝手に言ってろ」



そう笑ったケイくんは、「トイレ」と言って立ち上がり、歩いて行ってしまった。


……そして、戻ってきたあともケイくんの態度は変わらず、私は諦める他なかった。

もう名前のことは忘れよう。ケイくんはケイくんでいいや。

と思うことにして、食事を楽しむことにした。