……よくわかんないや。

昔からの友達のように話していたけれど、実際は違う。

昨日会ったばかりのこの人のことを、私は全然知らないんだよね……。


じゃあやっぱり、友達じゃないってことかな?

んー……。



「……ねぇケイくん」

「うん?」

「私とケイくんの関係って、何?」



と、素直に聞いてみる。

そうするとケイくんは、少し迷った顔で微笑んだ。



「よくわからないな」



……ケイくんは、私が思ったのと同じようなことを思ったらしい。

そしてそのあと、水を少しだけ飲んでから小さく言う。



「でもまぁ、他の女よりはずいぶん近いとこに居るよ」

「え……?」

「女にメシを奢るとか、バスケを教えるとか、そういうのやったことないから。
だから、お前は多分、特別な奴だよ」



特別。

私は、ケイくんの特別……?


ドキンドキン と心臓が鳴るのと同時に、顔が赤くなるのを実感する。

本気か冗談かはよくわからないけれど、それでもケイくんは、私だけを見つめている……。



「……」

「……」



……どうしよう、会話が、止まっちゃった……。



「あ、あの、ケイくんっ……」

「ん?」

「えっと……私が“特別”な人間なら、その……どうして本名、教えてくれないの?」



……って!! こんな時になんでそれを聞いてるのっ……!!

うわー……ケイくん、呆然としちゃってるじゃんっ……!!



「ご、ごめんっ!! でも、本名知りたいなぁって思っちゃったんだもん!!
仕方ないじゃん!! だから教えやがれこの野郎!!」



……って、ますます変な流れに……。
私、なんでこんなこと言ってるのー……。



「……プッ」



……うっ、笑われた……。




「お前、面白い奴だなぁ」

「……面白くしてるつもりなんてないもん」

「いや、面白いよ。 だからお前には絶対、俺の名前は教えない」


「え?」



……えぇ!?

名前、教えてくれないの……!?