「ちょっ……ケイくんっ……!!」
腕を掴む力が強くて、ちょっと……て言うかかなり痛い。
それに、歩くスピードも速くて何度も転びそうになる。
だけどケイくんは、そんな私に構うことなく歩みを進めていく。
……そして、空き地からずいぶん離れたところで、ようやく腕を離してくれた。
「女ってのは、男を顔で判断してんのか?」
眉を寄せて、相変わらず不機嫌そう……。
「……ごめん。 私、メガネをかけてるかどうかで判断しちゃってたかも……」
キャーキャー言ってた子たちの代表……と言ったら変かもしれないけど、でもきっと私と彼女たちは同じ。
だから「ごめん」と言って、メガネをそっと差し出す。
「メガネをかけてると、かなり地味な感じに見えるけど……でもメガネをかけてないケイくんって、その……すっごくカッコイイから、みんな自然と集まっちゃうんだよ」
モゴモゴと言葉を繋げる私に、ケイくんは呆れた顔で息を吐く。
「お前やアイツらがどう見てんのかは知らねーけど、どんな俺でも“俺”には変わりないんだけどな」
メガネを受け取り、ケイくんはそのまま ふらりと歩き出す。
「七瀬、一緒にファミレスでも行くか」
「……へっ?」
「お前、ほんとはもっとあそこに居るつもりだっただろ? なのに俺が無理矢理連れ出した。 だからお詫びにな」
振り返りながらメガネをかけたケイくんが、にっこりと笑う。
「好きなもの食え。 俺が奢っちゃる」
「あっ……うん……!!」
優しい声と笑顔に、私も笑みを返し、隣に並ぶ。
「……ねぇケイくん。これってなんだか、デートみたいだね」
聞こえるか聞こえないかくらいの、小さな声でそう言ってみたら……、
「デートっつーか、兄が妹にメシを奢ってるように見えるんじゃね? お前チビだから、小学生に見える」
……と、返された。