…ついさっきまで、ケイくんがかけていたメガネ……。
それをそっと、かけてみる。
「……ほんとに伊達メガネなんだ……」
かけてる時もかけていない時も、見えるのは同じ景色。
ケイくん、どうして伊達メガネなんかかけてたんだろ?
オシャレ……にしたら地味なメガネだよね。
あ、もしかして……女の子たちから逃げるためだったりして?
バスケ上手なイケメン男子だし、太一くん曰く『ケイのプレーを見たら絶対惚れる』らしいし。
「……メガネかけると、印象がガラッと変わるもんなぁ」
メガネをかけてるケイくんは、どこからどう見ても真面目くんだ。
メガネが無い時とは、まるで逆のイメージ。
あんまり目立ちたくないから、メガネをかけてるのかな?
……と言うことはつまり、メガネを取った今は……──、
「……あーぁ、囲まれちゃった……」
──……見事なくらい、たくさんの女の子がケイくんを囲んでしまっている。
私にメガネを預けたせい、だよね……。
ケイくんの周りはキャーキャーと騒がしく、ボールのやり取りもまともに出来ない状態。
太一くんは女の子と嬉しそうに話してるけど、その隣に居るケイくんは、煩わしそうに眉を寄せている。
……と、その不機嫌そうなケイくんが、私を見た。
そのまま、ずんずんと近づいてきて……──、
「帰るぞ」
──……と、私の腕を掴んで歩き出した。
……って、えぇ!? なんで私まで……!?



