「俺とアイツはガキの頃からずーっと同じ学校の同じクラスだったんだけど、今は違う学校に居る。
だからさ、実はちょっと心配してたんだ」

「心配?」

「そ。 あの馬鹿のテンションに周りがついていけないんじゃないか?って」


「……なるほど」



常に騒がしい太一くんのそばには、いつもケイくんが居て……そして、ずっと太一くんをセーブしてきたんだろう。

だけど高校になって二人は別々の道へと進んで、バラバラの生活を送ってる。

だからケイくんは、太一くんをずっと心配してたんだ。



「えっと……確かに、煩わしいって思うこともあるけど、でも太一くんが居てくれるおかげで、クラスは結構まとまってるよ。
他のクラスよりも全然雰囲気良いし、毎日楽しいもん。 だから、心配しなくて大丈夫だよ」



なんとなく、『大丈夫』と言ってみる。

そんな私に、ケイくんはまたニッと笑って、小さく頷いた。



「それならよかった」



短い言葉と共にまた汗を拭い、壁に寄りかかったケイくんは、ゆっくりと目を閉じた。

そして、微笑みながら言葉を続ける。



「俺さ、本当は太一と同じ学校にしたかったんだよ」

「え? じゃあ、どうして別の学校に?」

「そりゃあ、バスケのためだよ。 うちの学校、全国常連の強豪校だったから」