ありふれた恋。


「一般的に見ればアイツは綺麗なのかもな」


陽介の口から女性を褒める言葉が飛び出し、思わず耳を塞ぎたくなる衝動に駆られた。


「あういう人がタイプなんだ」



綺麗で知的な雰囲気を持って、それなのに冷たい印象をもたない女性が好きなのか。

柔らかい笑顔は、同性から見ても魅力的。



「おまえ、皮肉れてるな」

「……可愛くないよね」



自分でもあきれてます。

不安になることなんて無いはずなのに。



「俺のタイプが誰かなんて分かりきってるだろう?おまえが可愛くないのなら、俺はブスと付き合ってんのか?」


陽介の手が伸びてきたかと思うと、鼻を摘ままれた。


ぐっ……


色気の欠片もない声を上げれば、陽介はくすくすと笑った。


「可愛すぎ」


「……」


「十分、おまえは可愛いから。心配すんな。他の女に揺らぐわけないだろう」



私に自信を持たせてくれる、陽介の言葉。



「それに言い出したらキリがないぞ。俺は祐太郎にいつも嫉妬してるぞ?」


「はぁ?」



妬いてくれるのは嬉しいけれどよりによって祐太郎?



「おまえと年も同じで、気軽に話せる仲間って感じでさ。俺には入れない空気を共有してるだろ」


「そんな大したものじゃないよ?」


「それでも妬ける」



ああ、そうか。

不安なのはお互い様なんだね。



「初めて会った時、泣きじゃくるおまえを見てさ。俺が守ってやらなくちゃ、って思った」



ガラの悪い男たちに乱暴されかけ、恐怖に声も出せなかった私を救ってくれた陽介。

あの時のヒーローが、最愛の人となった。