ありふれた恋。


「でも俺たちは、ずっと笑ってられる夫婦になれると思うぞ」


え……?



「その間抜けな顔はなんだよ。時が来たら俺たち、結婚するだろ?」



私の驚きようが気に入らなかったのか、不満そうだ。



「陽介…と、ずっと一緒にいたい」


「知ってる」


「祐太郎がね、遠距離は駄目になると……」


「俺たちには、当てはまらない話しだな。遠距離だろうが、好きなものは好きなんだから」



遮られた言葉に上乗せされたそれは、とても甘い台詞だった。

壊れてしまった恋愛を距離のせいにする2人になんてなりたくないし、そもそも私たちの恋は永遠だろうから。



「おまえは知らないだろうけど。俺はおまえの寝てる間にキスしたことが何回もある」


「え……?嘘でしょ?」



初めてきいた陽介の秘密に意外な想いを隠せなかった。



「そんなに驚くなよ」

「そりゃぁ驚くよ。どうして寝てる間なの?」

「拒否されたら俺だって傷付くから。でもさすがにおまえが俺のベッドで寝たあの誕生日の日は、我慢できなかった」



体温が上昇する。顔から湯気が出そうな勢いだ。



「誕生日だから特別にベッドで寝せてやったんだ。そのお返しに突然のキスくらい許せ」


私はキスされて嬉しかったのだから、陽介に怒るどころかむしろお礼を言いたいくらいだ。


「俺がこんなに好きだと言ってるんだ。海だろうが山だろうが、俺たちを隔てる障害のことなんて気にするな」

「陽介……」




やっぱり良い男だ。
離れていく私を気持ちよく送ろうとしてくれている。



それでも涙の別れになるかもしれない。

離れることを考えるだけで、こんなにも胸が痛いのだから……。