スクリーンが霞んでいる。

号泣した。

こんな素敵な恋愛をして見たいと憧れさえ抱いた。私はヒロインのように美しくなければ、知的でもないけれど。

同じように永遠の恋を夢見る女だ。


「ほら、」

「ありがとう」


鼻をすすっていた私にティッシュを投げつけた陽介は、感動しているだろうか。

映画が終わって、すぐに聞いた。


「どうだった?」


点いたばかりの電気は、どこか薄暗い。


「ん?」

「あんな恋愛してみたいとか、思わない?」


陽介の恋愛価値観はどんなものだろうか。
身を乗り出して答えを待つ。


「別に」

「あっ、そう」



ロマンの欠片もない男に惹かれている私はいったいなんなんだ……。


「おまえは?あんな恋をしたいのか?」

「うん、してみたい」

「波乱万丈な恋だったじゃねぇか、疲れるだけだぞ」


やっと叶えられた恋だからこそ、魅力的なのだ。
簡単に手に入ってしまう恋ならば、その価値に気付きにくい。


「どんな恋をするかより。誰と恋をするかの方が、俺は大切だけどな」

「誰と……」



その見えない誰かに、嫉妬してしまう。


「なぜ黙る?」



エンドスクロールが流れてからずっとテンションが高かった私が急に喋らなくなったからか、不機嫌そうな顔をした陽介は、席を立った。


数歩の距離を開け、私も後を追う。