「せっかく俺様と一緒にいるんだ。楽しそうにしろよ」
「私は楽しいよ。けど……」
「けど?」
「陽介は楽しくないんじゃない?」
晴れ渡る空の下で、陽介の隣を歩けることは幸せ以外のなにものでもない。
その温かい気持ちを、ほんの少しでもいいから陽介にも感じて欲しいと思うのは欲張りなのかな。
「俺が楽しくない、なんて勝手に決めるなよ」
「でも……」
「つまんねぇなら行かないし、面倒なら映画なんか見ねえよ。俺は世界一、自分の気持ちに正直な男だぞ?」
真面目な顔で世界一の男だと宣言されて、くすくす笑ってしまった。
どんな時でも笑顔になれるのは、陽介がもたらす魔法。
「映画、なに見る?」
「ラブストーリーが良い!」
「人様の恋愛なんて見て、なにが面白いのか俺にはよく分からない」
「えー、良いじゃん」
「違うのにしろよ。なんか歴史の映画、あったよな?」
陽介は今話題沸騰中の、新作映画を挙げた。
確か実話を元に再現した、勇者のストーリー。
「歴史は難しいんだもん」
「それじゃ、おまえは寝てろ」
そんな突き放した言い方だけれど、結局はラブストーリーになることを私は知っている。
どんなにくだらない恋愛物語でも、歴史映画がどんなに素敵な内容でも、
陽介は私の見たい方を優先してくれるんだ。


