ありふれた恋。


ラップをかけてテーブルに用意してくれた朝食を食べ、鏡の前に立って気付いた。

あまり遠出するのには相応しくないであろう格好。



「着替えに戻るか……え!?」



独り言の最中、突如

鏡に陽介の姿が映った。



「そんなにびっくりすることかよ。ここは俺んちだぞ」

「大学は?」

「どうしても出さなきゃなんねぇ課題があったから、行ってきた。どこか出掛けるのか?」

「お天気だから家にいるのもな、って」



でも陽介が帰ってきたのならもう出掛ける必要もないんだけどな。


「たまにはおまえと出掛けるのも良いかな」

「一緒に行ってくれるの?」

「ああ。どこ行きたい?」



まるでデートのような展開に、心が馳せる。



「映画見たい!」


初デートといえば、映画?そんな単純な発想。


「駄目?」

「良いよ」


肯定の言葉に、思わずガッツポーズしてしまった。