ありふれた恋。


目覚めた時には、既に陽介の姿はなかった。

「やっちゃった……」

枕元にあるデジタル時計に手を伸ばせば、もう正午を回っていた。

陽介はとっくに家に出たのだろう。
揺れるカーテンからは干された洗濯物が見えた。


洗濯機が動く音で、目を覚まさなかったなんて。


寝不足は解消され、代わりに部屋に取り残された虚しさを味わう。

テーブルを見上げれば、ラップがかけられた朝食が置かれていた。



どっちが女だか分からなくなってきた。



「はぁ」



ダルい身体を引きずるようにしてベランダに向かう。


高い位置にいる太陽は午前中に、洗濯物を乾かすという役目を完了したようだった。


今日は快晴。



天気の良い日に外に出ないなんて勿体無いな。


高校に行くという選択肢は最初から除外され、何処か行く場所はないかと思索する。



条件は、ひとりで行っても楽しめる場所。



「とりあえず外、出てみよう」


大きく伸びをした。