やはり余計な詮索は止めるべきだった。
今まで陽介が語ってくれないことから、私なんかに話したくないのだと察するべきだったのに。
自分から足を踏み入れ、また傷つくなんて。
心がもたないよ…。
「親がどうとか、大学がどうとか。そんなの関係ないだろ?俺は俺だし」
「え?」
「親が医者でその後を継ごうとしているなんて、凄いわね」
まるで誰かのマネをしているような口調で、陽介は苦笑した。
「そんな風に言われるのが、すげー嫌。むかつく。親や大学で全ての評価を決められている気がして、嫌気がさすんだ」
「うん…」
そういう意味か。
焦った。
「私もその気持ち分かるよ?」
「うん」
「お父さんは海外転勤中なんだけどね。母はその間に好き勝手やり放題。働いてもいないし、家事すらまともにやってない。それを見て近所の人が言うの」
「うん」
「あの母親だったら、不真面目な娘ができても仕方がないって。親が親なら子供は…って」
「最低だな」
陽介の言うとおり、大人は最低。
環境や両親から子供の性格を見抜こうとするなんて、どうかしてる。
「だから、陽介の気持ちちゃんと分かるよ。私とは正反対だけど」
「そっか」
静かな返事が聞こえた。
「俺は俺でおまえはおまえ。それで良いよな」
「良いと思う」
「ああ」
私は駄目な女で、陽介は秀才。
2人を分析したら異なる部分が大半を占めるだろうけれど、ほんの少しは一致する部分があると思う。
その一致する部分を大切にしつつ、違う箇所を理解してあげられるのなら、私は陽介のことを、もっともっと知ることができるのかもしれない。


