「寝れないわけ?」
「……なんで分かるの?」
「だっておまえ、いつも歯ぎしりするから」
「ウソ!?」
「嘘じゃねぇよ」
好きな人の前で歯ぎしり…もう終わった。
最悪だ。
「眠れない理由は?」
「知らない」
「じゃ、どうしたら寝れそう?」
どうやら私が眠れるまで、お付き合いしてくれるようだ。
「なんか話してよ」
明日も大学で授業がある陽介に、夜更かしをしてもらうのは悪いけれど。
今のままじゃ、絶対に眠れないであろう自分の我が儘を優先させた。
「陽介の話が聞きたい」
「例えば?」
「家族の話とか、大学の話」
あの女の人の話しを尋ねる勇気は、まだ出ない。
付き合っていると言われたら、
どんな反応をすればいいか分からない今は、避けたい話題だ。
「家族構成は、父と母、俺」
「うん、陽介は一人っ子のような気がしてた」
「よく言われる」
「ご両親はなにしてる人?」
家族の話しをされるのは初めてで、聞きたいことが山ほどある。
私とは違う、温かい家族の話を。


