ありふれた恋。


天井を見つめたまま、動けないでいる。

何故か、凄く緊張していた。


このまま夢の世界に旅立つことなんてできなそう。



「陽介……」


息苦しくて、思わず口を開いた。



「なに」


小さい小さい返事は、とても眠そうだ。


「やっぱ床……」

「駄目」

「でも……、」



"なんだか落ち着かない"、

という言葉はのみ込んだ。



今日の私はどうかしてる。



「どうしても床で寝ると言い張るなら、帰れ」



「嫌だよ」



家に帰ったって、眠れるはずがないじゃんか。



「じゃぁ、早く寝ろ」

「…は、い、」



溜め息混じりの返事をする。


陽介は、なんとも思っていない様子だけれど。
こちらの心臓はヤバい。



隣りで目をつむる陽介のことを過剰な程に意識してしまっている。






今日、抱き締められたんだよね?



昼間のことを思い出し、余計に目が冴えた。





ーー俺が沙樹を、愛してやるから。だからおまえは大丈夫だろう?





陽介の行動の意図はわからないし、たぶん深い意味はないと思われる。



ずるい…私だけが意識しているなんて、滑稽すぎる。