ありふれた恋。


そっと鍵を差し込み、静かに玄関の扉を開けた。


電気が消え、静寂に包まれた陽介の寝る部屋へと足を運ぶ。

摺り足でそっとベッドへ近付き、寝顔を見ようと試みる――が、



「早く寝ろ」

いつもの低い声が聞こえた。


「起こしちゃった?」


寝ていても人の気配を感じ取るものなのかも。


「別に」

「ごめんね?こんな時間に」

「おまえが非常識なのはいつものことだろ。もういいから寝ろ、って」

「あ…、うん。おやすみ」



率先してベッドから離れ、床に移ろうとすると、



「隣り、くれば」



静かな声がした。



それは隣りでーーつまり、同じベッドで寝てもいいという許可が下りた言葉。


でも今日は私の誕生日でなければ、特別な日でもないのに。


「これからは俺の好きになようにするつもりだから。嫌とは言わせない」


「でも、良いのかな?狭くない?」


「俺は気にならない」



どういう風の吹き回しかは知らないが、今夜は素敵な日だ。