ありふれた恋。


祐太郎に見送られ、自転車のペダルを踏む。

彼女、どんな子なのかな。
今度、紹介して貰わなくちゃ。

そんなことを考えながらとにかく走った。



陽介の住むマンションは10階立てで、一人暮らしにしては贅沢な外観だ。

マンションのエントランスもオートロックのセキュリティー付きで、いつもと同じように暗証番号を入力して正面玄関を潜った。


陽介の部屋は最上階だがエレベーターを待つことすら煩わしくて、迷わず階段を選択する。


きっと眠っているだろうから、陽介が私が来ていることに気付くのは朝になるだろう。

その朝に、なんとしても起きなくちゃ。


大学に向かう陽介に「いってらっしゃい」を言えずに寝過ごすもんか。