ありふれた恋。


祐太郎といると、もの寂しい夜でも明るい気持ちになれる。

彼の周りにはいつも沢山の人がいて、人気者だ。


「今日、駐輪場で陽介と話したよ。祐太郎が私の居場所、教えたんだよね?ありがとね」


「いつもおまえが自転車を止めている場所を教えただけだよ、俺は。それに駐輪場に行ったのは陽介さんの意思であって。2人の橋渡しになったとか、そんな大それたことはしてねぇな」


落ち着きのない祐太郎は、道端にある自動販売機にお金を投入した。


「でもやっぱり祐太郎のおかげだよ」


「だからなにもしてない、って。それより陽介さんかなり待ってたんじゃないの?」


「待ってた?」


「だっておまえがいつ駐輪場に行くかなんて教えてないからな」


「……」


待っててくれたのかな。


「おまえの行動パターン、俺にはよく分からないし」



放課後は気が向いたら祐太郎と遊びに行くし、真っ直ぐ家に帰ることもある。
場合によってはカラオケでオールなんてこともあるから、とにかく好き勝手やっている。



行動パターンが決まっていない、
自由奔放の生活。


本当は門限なんかもあって、
帰宅すれば家族が待っている、
そんな生活を送りたいのに。



それは叶わぬ理想だ。



「陽介さんに宜しくな」


祐太郎は買ったばかりのコーラを一気に飲み干し、手を振った。


もう行けよ、という合図だ。




「祐太郎はなにしてるの?」


先程と同じ質問を繰り返す。


「ここで待ち合わせしてんの。デート」



語尾にハートが付いているんじゃないかと思うくらいの浮かれ声。


「こんな時間にデート?」


「お互いが会いたくなった時には、時間なんて関係ないだろーよ」


「そうだよね」


妙に納得。
私も陽介に会いたいから部屋を飛び出して来たのだから。