ありふれた恋。


真夜中の道路を自転車で走ると、頬に冷たい風があたる。

壮大な空に浮かぶ、綺麗な月。

暗闇に紛れることなく輝く月は立派だ。

解放感に溢れていた。




「沙樹ー!!」

「え?」


大きな声に反応して、自転車のブレーキをかける。

こんな時間に叫ぶなんて、近所迷惑なのに。
彼はいつも元気が有り余っている。



「なにやってるの」


歩道橋の上で道路を見下ろす祐太郎に声を掛ける。



「おまえこそ、どこに行くんだよ?」


相変わらず声を張り上げる祐太郎は、階段を駆け降りてきた。



「陽介のとこ、行こうかなって……」


勢いよく階段を降りてきたのに、息切れひとつしない祐太郎はニヤリと笑った。



「仲直りしたんだ」

「まぁ……」

「良かった、な」



祐太郎は私の肩を乱暴に叩くと、また豪快に笑った。

だから近所迷惑だって。