ありふれた恋。


寝付けない夜。
時計の針は日付けが変わったことを示している。

陽介から離れようと決めた日から、寝不足が続いている。自宅の温かいベッドの中よりも、陽介の部屋の床が寝心地が良かったなんて。

側に陽介がいないと眠ることすらできなくなった私は、彼に依存し過ぎているのだろうか。

愛だとか、恋だとか。

そんなものに振り回されている場合じゃない。

全身が陽介を必要としていて、もう限界だ。



――会いたい。


願いはそれだけ。


恋仲と呼べる関係になれなくてもいいから、


一生、側にいたい。


陽介なしの人生を、私は生きていく覚悟も自信もないんだ。


勢いよく布団を払いのけ、立ち上がる。

さすがに寝巻きのままで外に出ることは躊躇われたのでさっさと着替える。

Tシャツと紺色のパンツというラフな格好に、自転車の鍵だけ持って、家を飛び出した。