ありふれた恋。


親子関係なんてものは、とっくに崩壊している。

束縛されずに自由に育てられた。

私と母を繋ぐものは、血縁以外にないと言っても過言ではない。


陽介は親の引いたレールの上を歩くことを避け、一人暮らしをしている。

引かれたレール。

そんなレールがあるのと無いのとでは、どちらが幸せなのだろう。

少なくとも陽介の親は、彼に期待をしている。

だから真っ直ぐで平坦な道を進めるよう、誘導してくれるのだ。そこにはどんな形であれ、親の「愛情」が存在している。



それに比べ、私は……。



「まぁ無駄な問題を起こさないでね?あなたひとりで対処できないことは、やるんじゃないわよ」


問題や揉め事に無駄かそうでないかは、どうやって見極めるのだろう。

偉い大学の教授は、
この世には無駄なものなど一切ないと、演説をしていたのに。


「良いわね?」

返事をする前に、部屋へと駆け上がった。






部屋の空気を入れ替え、カーテンを開ける。

あの人が、母親役なんて演じられるわけがない。



子供のことより自分を中心に考えて好き勝手過ごしているあの人は、

私に対する愛情なんて持ち合わせていないと思う。




親にも愛されない私が、



陽介からの愛を求めるなんて、
おかしな話しかもしれないけれど。



どうしても、愛されたいと思ってしまうんだ。