ありふれた恋。


「そんな綺麗事だけの関係なんて、求めてない」

「うん…でも陽介は、私になにも言ってくれないよね?」

「ん?」

「だって陽介のこと、ほとんど知らない」



通っている大学名も、陽介の名字も、家族のことも、話して貰った記憶はない。

鬱陶しがられるのが嫌で深く知ろうとしてこなかったんだ。



「なにが知りたい?」

「全部」


思い切って、ありのままを口にする。

もう自分を繕うことで陽介の側にいようという、考えは捨てた。


良い子の仮面をつけた私ではなく、本当の私を見てもらいたい。


「まぁ色々、教えてやる。今までだっておまえが尋ねさえすれば答えてやったのに」

陽介の側にいることを優先し続け、遠回りをしてしまったのかもしれない。






今日という日が、



私と陽介の出発点なのかもしれない。



また陽介とスタートラインに立てるなら、もう逃げたりしない。



気持ちを偽ってまで別れを選択するくらいなら、傷つけられても陽介の近くへ行ける努力をしたいと思う。

強くありたい。



私は、変われるでしょうか。