ありふれた恋。


陽介の言うように私は楽な道を選択した結果、またひとりで傷付いた。


はっきり言って私のとった行動は小学生以下だったのかも。


「陽介、」

自転車を押しながら、名前を呼ぶ。

「ん?」


足を止めて振り返った陽介に謝らなければいけないのに。


涙を見せる私は卑怯だ。


女の武器は涙だというけれど、私が泣くことで、少しでも可哀想だと思われるなら、

涙なんて、渇れてしまえば良い。



同情されるのは、惨めすぎるから。



「ごめん…」

慌てて涙を拭う。

「ばーか」

いつものように意地悪く笑うと、陽介は私から自転車のハンドルを奪った。


「泣けば、おまえも少しは女に見えるな」

「なにそれ……」

「泣いても良いぞ」


初めて陽介の前で泣いた私に、

もっと泣いても良いと、

そんな風に優しくされたら、

余計に涙が止まらなくなる。