ありふれた恋。


「ああ?」

コイツなに言ってるんだ、
という冷めた目付きでこちらを見るから黙るしかない。


けれど今日の私は少し強気だ。
だって誕生日だもん。


「陽介の好みのタイプとか知らないからさ」


不自然にならないように、なんともない顔で言う。


バレてはいけない。

好きだと知られたら、私たちの関係は終焉してしまうだろうから。


恋だとか愛だとか、
そんな面倒くさい関係は陽介は嫌いだろう。



陽介にとって今の私たちの距離はちょうど良いんだよね。



「そんなもん、好きになった奴がタイプだろうが」

「そっか」



陽介らしい答えが返ってきた。

もし自分と正反対のタイプを挙げられたとしたら、私はどんな気持になったのだろう。

傷付くと分かっている質問を自ら投げ、どん底に突き落とされるなんて自虐的すぎる。


「おまえは?」

「私?」

「どんな男が良いわけ?」


珍しく陽介からの質問を受けた。