「学校、ちゃんと行く!」
「ああ」
湯気のたつ珈琲はピンク色のマグカップに注がれていた。
イチゴ牛乳みたいな、優しいピンク。
もしかして果物で一番、イチゴが好きだって知ってて、あえて……。
「幸せ」
「なんだいきなり」
「陽介と朝から一緒にいれるなんて、初めてだから」
置いてきぼりにされた朝、もう陽介に会えない気がして。
昨日の「おやすみ」が最後の別れの挨拶じゃないか、って何度も思った。
「おまえが早起きしないのが悪いんだろ」
「うん…起こしてくれたら起きるよ?」
「甘ったれたこと言うな」
自分にも厳しい陽介は同じように私にも厳しい。
少しくらい、優しくしてくれても……。
ああ、またワガママなことを思ってしまった。
ここまでしてもらった上にもっと優しくされたいだなんて贅沢なお願いだ。
得体の知らない女を一晩泊めてくれた陽介にこれ以上、なにを望むというのか。


