ありふれた恋。


朝に強い陽介はテキパキと動き、あっという間に朝食の準備を整えた。


パン、目玉焼き、サラダ。
煎れたての珈琲。


「一人暮らしなのに……」

「ん?」

「陽介、一人暮らしなのにちゃんと食材揃ってて凄い」

「割りと自炊する方だから。さっさと起きろ」



まだ布団の中でもたもたしている私は朝に弱い。

反対に夜は行動派で、日付が変わるまで遊び続けることは日常茶飯事。そのせいで朝は起きれず、遅刻をして高校の出席日数はひどいことになっている。


「ほら、」

見かねた陽介は毛布を私から剥がすと、カーテンを全開にした。


眩しい、まだ眠い。


そして嬉しい。


こうして朝を陽介の隣りで迎えられたことが、なによりも嬉しくて。


誕生日はやはり特別な日なんだと、ひとりで納得する。



「陽介、大学は?」

席に着き、並べられた朝食を眺める。
美味しそう。


「……遅刻」

「珍しいね」

「そういう気分だったから」


向かい合うかたちで座った陽介はサラダをお皿に分けてくれた。


「ほら、早く食え」

「いただきます」



いつもと違う朝は、静かに始まった。