「どーでも良いけど、早くして?」
「あ、はい」
水をマグカップに注ぎ、差し出すと陽介の冷たい手が触れた。
「あ…」
一瞬のことなのに、動揺してしまう私。
反対に何事もなかったように、水の飲み干す男。
私たちの呼吸は、ズレている。
このズレを埋めて一致させることが「恋愛」というのなら、
そんなものはいらない。
だって私は私で、陽介は陽介なのだ。
違って当たり前。
もし私たちが同じなら、
陽介は私を必要としないはずだ。
そして私は自分に欠けた何かを、
所持している陽介に惹かれている。
手が触れたくらいで杞憂する私と、冷静な陽介。
この図はたぶん、私の"片思い"を表しているのだろう。


