言葉もなく、見つめ合うのに、

「ジュリア! どこに行ったのです!」

ヒステリックに怒鳴るような母の声が聞こえてくる。

「……早く、行かれてください。お嬢様……」

顔をそむける彼に、あのキースとの婚約の場で私の背中を押し出した時と同じ、辛い思いが湧き上がる。

「リュート……」

呼びかけには、もはや彼は応えてはくれず、

残っていたグラスを空けて、

「……もう行かれてください」

と、くり返した。