やがて、侯爵との婚姻の日取りが決まり、邸を離れる時が訪れたーー。

父も母も祝福をし、使用人たちもこぞってお祝いの言葉をかけてくる中、そこにいるはずのリュートだけがいなかった……。

(……見送りにも出てくれないなんて……)

いてもたってもいられずに、忘れ物を口実に邸内へ彼を探しに戻った。

リュートの部屋の扉を開けると、窓辺の丸テーブルに頬づえをついて、彼は一人アルコールを口にしていた。

「……リュート、何してるの?」

訊ねると、

「あっ、お嬢様……」

彼は、ぼんやりと私の方へ顔を向けた。