「……リュート」 呼んで、壁際にいる彼のそばに寄ると、 「……お嬢様、どうして……」 と、僅かに後ずさった。 「……別れを言って来いって、」 話すと、 「そうですか……」 リュートは持っていたグラスを、ひと息に飲み干した。 「……そんなに飲んだら、酔ってしまうわ……」 「ええ……酔いたい気分なのです…」 会話は続かず、まして別れの言葉を吐くことなど、私にはできそうになかった……。