「私の婚約者を紹介させていただきますーージュリア・バートリー嬢です」 キースに手を取られて、城内の大広間の階段を降りて行く。 ドレスの裾を持ち上げて会釈をすると、来客者たちから拍手が湧き起こった。 大きな拍手の音を聴きながら、もう戻れないんだと感じる。 あの人のところには戻ることはできない……と、目を上げて広間を見渡す。 その視界の隅に、壁にもたれ掛かるようにしてシャンパングラスを煽っている、彼の姿が映ったーー。