「……私が、おまえ如きに譲ってやろうと言っているのに?」

キースが見下したように言う。

「……譲ってほしいなどと思ったことは、私にはありません。元よりお嬢様を賭けるなどということは、出来るはずもございません」

挑発に乗っても来ないリュートに、キースが明らかに苛立ちを募らせる。

「……私とジュリアとが結婚をすれば、おまえはもう二度と会えなくもなるんだ。……私は、しばらくは我が城へ二人で住もうと思っている。伯爵家には住まないが、それでもいいのか?」

「……。……構いません」

短い沈黙の後で、リュートが口を開く。

「……お嬢様が幸せであるのならそれで……私は、それで構わないのですから」

これ以上の掛け合いを避けるようにリュートは言って、いつにない強い眼差しでキースを見た。