「……私は、簡単にあなたのものになるつもりなんかないわ…」

腕の中から、脱け出して言う。

「…ふん、言ってくれますね? だが、もう逃げるのが叶わないことくらいは、聡明なあなたならわかっているはずですよね?」

何も言葉を返せずに、唇をぎゅっと噛む。

「……そう、あなたより格上の侯爵家の私を拒むことなどは、伯爵家のあなたにはできない」

そこまで言って、ふっと言葉を切って、

「あなたもわかっているのなら、おとなしく私のものになった方がいい。

このまま、愛もない結婚生活を送るよりは、私を愛そうとした方がましだとは思いませんか?」

そう自分勝手にも話して、私を言いくるめようとする。

「……この城を見てみなさい。海の碧さに、白亜の城が映えてとても美しい。まさに、ブルーカレント(青い潮の流れ)の名に相応しい……この城が、あなたのものになるんですよ?」