「……紅茶を淹れかえて参ります」

何事もなかったかのように告げて、目の前のカップを持ち上げようとする彼の手をつかんだ。

「……嫌よ。あんな男と一緒になるくらいなら、あなたとここから逃げ出した方がましだわ…」

「……お嬢様、聞き分けてくださいと、たったいま申し上げたはずです。私には、あなたを連れて逃げるまでの度量はございません……」

手を引き、ティーカップをトレイに乗せ、

「温かい紅茶でも、お召し上がりくださいませ。気分も落ち着くかと思いますので」

取り繕ろうような笑顔を浮かべて、リュートは背中を向けた……。