「……ジュリア様…」

頭上から、切なげな声が響くけれど、彼は抱きしめ返してはくれずに、

「……あなたは、幸せにならなければならないのです。……そして、この私に、あなたを幸せにする術などがあるはずもないのですから……」

静かに、私の身体を引き離した。

「リュート……私は、あなたといられるのなら、それで……」

思いを口にしかけるのを、

「……それ以上はもう、おっしゃってはなりません」

遮って、リュートが薄く頬笑む。

「……私は、たとえ主従関係であろうとも、お嬢様とともにいられるのであれば、それで良いのです。

ですから、お嬢様もそれ以上を望むことなどは、もうおやめくださいますよう……」

「……リュート」

呼びかけるのに、もはや何も喋ることはできないのだと、リュートが自らの唇に人差し指を立てる。