「お嬢様、何をされて……ニルヴァーナ侯爵様、大丈夫でしょうか?」

頬に触れようとするリュートの手を、

「…触るな! 下賤の者め…!」

キースが声を荒げ、パシリと払いのけた。

「……申し訳ございません」

謝るリュートを庇って、「もういいわ…」と、伝える。

「……ティータイムの用意はいいから、彼には帰ってもらって……」

「……しかし、お嬢様……」

漂う険悪なムードに、リュートが困ったような表情を浮かべる。

「……いい。私も、気分が悪くなったんで、帰らせてもらうから」

と、キースが席を立ち行きかけて、私にふっと顔を近づけると、

「……庇い立てなど、関心しませんね…」

眉をひそめて、

「……私は、"それ"には負けません。……私は、本気ですからね……」

と、耳打ちをしてきた。