「なぜ、謝るのよっ…」

苛立ちに任せて、彼の腕をつかんで引き戻す。

「……お嬢様!」

声を上げる彼の整った美しい顔が、鼻先に迫る。

「……まだ、命令は済んでないわ」

「……いいえ、いくら命令でも、もうお聞きすることは……」

睫毛が触れ合う程の距離で、見つめ合う。

「……してよ、もっと」

「……もう私には、これ以上のご命令にお応えすることは……」

抗う彼に、

「……嫌いなの? 私のことが……」

尋ねた。