……舞踏会から、帰って来ると、

「…ジュリア、舞踏会でパートナーは見つかったのですか?」

待ち構えたように出迎えた母に、そう訊かれた。

「……見つかったわ」

とだけ、母に応える。

「まぁ、本当に? どんな御方なの?」

「……侯爵よ。……ニルヴァーナ侯爵の次男の……」

名前は既に思い出すこともできなくて、そうぼんやりと口にする。

「ニルヴァーナ侯爵? 家柄も申し分なくて、素晴らしい御方だわ」

「……そうね」

テンションの上がる母親に、どうしようもなく冷めていくだけの自分を感じる。

ちらりとリュートに目をやるけれど、傍らの彼は私の方を見てもいなかった……。