「……いけません。あなたは、ご身分のある方と添い遂げて、伯爵家を継がれる身……私などのことは、どうかこれからも従僕として……」

「……どうしてよ…リュート…」

受け入れられることのない思いに再び流れ出す涙に、リュートがそっと唇を寄せる。

「……ジュリア様……私のためになど、泣いてはなりません。さぁ、もう泣かれずに、殿方のお誘いにお応えを……」

背中を押し出そうとするリュートに、

「……あなたは、それでいいの?」

と、振り返るのに、

彼は何も言わず、ただうっすらと微笑んだだけだった……。