「……お嬢様、なぜ涙など……そんな風にも泣かれたら、私は……」

言葉を切るリュートを、

「私は……なんだって言うのよ?」

上目遣いに、彼を見る。

「……私は、」

再びくり返して、リュートが押し黙る。

「……いいわ、誰かと踊ってくるから」

沈黙に耐えられなくなって、フロアへ行きかけた私の手がつと引かれた。

「……こちらへ、ジュリア様……」

リュートがいつにない強さで手を引いて、そのまま庭園へと私を連れ出した。

「……リュート、何よ?」

仄暗く噴水の音だけが響く木立ちの下で、月影を映す青い瞳を見上げた。