彼の家に着くと、そこには以前と変わらないままの風景が広がっていた。

夜通し移動をして、やっと辿り着いたこともあって、空は朝焼けの薄暗さだった。

彼は、まだ眠っているのかもしれないと思いながら、その扉を叩いた。

程なくして扉が開けられて、奥から顔が覗いた。

「……リュート」

懐かしいその名前を呼ぶと、

「……お嬢様…どうされたのですか? ここには、もういらしてはならないと……」

リュートが一瞬言葉を失って、困惑したような表情を浮かべるのに、

「……もう、私はお嬢様なんかじゃないのよ……」

と、告げた。