「……ここも、ここも通ったわ……」

窓に顔を付けるようにもして、景色を目で追った。

「……憶えてる。彼の元に、行ける……」

唯一の手がかりだった手紙が破られて、二度と会うことも叶わないだろうと思っていた彼に、

会えるのかもしれないと思うと、胸の奥が熱く沸き立つのを感じた。

「……リュート」

心深くに長く押しとどめていた、その名前を口にすると、彼の端正な顔がありありと目の前に浮かぶようだった……。