街中へと出て、彼に会いたい一心でひたすらに歩いた。

けれど、彼の居場所がわかる手紙も既になく、何処へ行ったらいいのかがわからなかった。

歩いても歩いても行く宛ても定まらなくて、仕方ない思いで辻馬車に飛び乗った。

窓を過ぎる景色を眺めている内、それがかつて見た光景だったことがふっと思い出されて、

「……この景色は……、」

かつての記憶を手繰り寄せた。

……ひとつが思い浮かべば、あとはもう次々とあの日見た景色が浮かんでくるようで、

忘れたくはなくて目に焼き付けた彼の元への道行きが、はっきりと鮮明になっていくのを感じた……。