だけど、もはやそんな言葉も届かないくらいに、私は希望を失ってしまっていた。
「……幸せなんか、ないのよ……私には」
口にして、
「だから……私のためになんか、泣かないで……」
涙に濡れた頬にゆらゆらと伸ばした手を、
「……いいえ」と、サムがつかんだ。
「ここから、逃げるのです……そして、貴女様に幸せを与えてくれる方の元へ……」
両手で、私の手を包むようにもして言うのに、
「……幸せを…与えてくれる……?」
しわがれた彼の声に呼び覚まされるように、急にあの人のことが思い出された……。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…