明からさまにムッとするキースに、

「…あ、ハハ、そんな恐い顔をせずとも、君の大事な奥方を誘ったりなどしないよ」

その場を取り繕って離れていくのに、

「……ふん、何が誘惑だ…」

と、キースが呟いて、私へ顔を向けると、

「……おまえは、所詮誰にでも誘惑されるような女なのだな…」

少しも笑っていない表情で言って、

「……他を回ってくる」

と、あっさりとつかんでいた腰の手をはずした。


……彼が、私を許すことはない。

改めてその憎しみの深さを感じて、そこに立ちすくむしかなかった……。