……乗り込んだ帰りの馬車の中で、 手紙は失くなってしまったけれど、せめてこの景色を忘れないでいようと、 彼の住む、この愛しくも思える風景を憶えておこうと、目にしっかりと焼き付けた。 滲む涙に霞む窓に、リュートの面影がぼんやりと浮かぶ。 「……リュート」 涙を拭って、ぼやける彼の横顔を目蓋の裏に閉じ込めた……。